第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展
ダムタイプ|2022: remap

本展覧会のプロジェクトメンバーである坂本龍一さんが、3月28日に逝去されました。
坂本さんによるサウンドが、この展覧会の空間を埋め尽くしていることに、
改めて感謝申し上げます。
心よりご冥福をお祈りいたします。

— 石橋財団アーティゾン美術館

坂本龍一さんの訃報をまだ受け止められず深い悲しみの中にいます。
坂本さんは真に実践の人であり、その勇気と行動を心から尊敬します。
そして多くのことを学びました。
ダムタイプのメンバーとして作品の制作に参加してくださり、
素晴らしい音楽を創造してくださったことを、心から感謝します。

2023年4月2日
— ダムタイプ

坂本さんは、唯一無二の世界的な日本人アーティストとして、
その活動を通して、世界中のひとびとを結び付けてこられました。
心から敬意を表しますとともに、ご冥福をお祈りいたします。

— 国際交流基金


第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(主催:国際交流基金)の日本館展示に選出されたのは、日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在であるダムタイプ。1984年の結成時から一貫して、身体とテクノロジーの関係を独自な方法で舞台作品やインスタレーションに織り込んできた彼女/彼らは、坂本龍一を新たなメンバーに迎え、ヴェネチアで新作《2022》を発表しました。「ポスト・トゥルース*」時代におけるコミュニケーションの方法や世界を知覚する方法について思考を促す本作を、帰国展として再構成してご紹介します。ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展は、イタリア、ヴェネチアの各所を会場とし、2年に一度開催される現代美術の国際展です。1895年から120年以上の歴史を重ね、今なお大きな影響力を持っています。 公益財団法人石橋財団は、近年、ヴェネチア・ビエンナーレ日本館展示への支援を行っています。また、財団創設者である石橋正二郎が、1956年に個人として日本館の建設寄贈を行った経緯から、2014年の日本館リニューアルに際して、石橋財団は改修を提案し、工事費用を寄付しました。このようなつながりから、石橋財団アーティゾン美術館は2020年の開館を機に、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展における日本館展示の成果を広く日本国内でもご紹介するため、帰国展を開催しています。

Media


Japan Pavilion Exhibition in Tokyo
—From the 59th International Art Exhibition, La Biennale di Venezia
Dumb Type, 2022: remap

開催概要

展覧会名: 第59回ヴェネチア・ビエンナーレ
国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap
主 催:
会 場: アーティゾン美術館 6階展示室
会 期: 2023年2月25日[土]– 5月14日[日]
Photo: Shiro Takatani ¦ 提供: 国際交流基金
Photo: Kazuo Fukunaga

本展の見どころ

1

新作《2022》を再構築して、
《2022: remap》として日本初公開

第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示で発表された新作《2022》を、単純に再現展示するのではなく、アーティゾン美術館6階展示室の空間に《2022: remap》として再配置します。ヴェネチア・ビエンナーレという各国ナショナル・パヴィリオンが立ち並ぶなかで、今日の地政学的境界、あるいは国境を越えて共通のインフラとなっているインターネット空間を基調としたコミュニケーションのあり方に問いを投げかけた《2022》を、サイト・スペシフィックに再構成し展示します。

2

坂本龍一を迎えての新作

2000年代後半より幾度となく高谷史郎と作品を作り続けてきた坂本龍一が、初めてダムタイプメンバーとして作品の制作に関わりました。坂本が本作のために新たに制作したサウンドトラックに加え、坂本の呼びかけにより世界各地でフィールドレコーディングされた音が、ダムタイプの視覚言語を通じて、その場に立って各人が耳を澄ませることの意味、機械を通じた知覚のあり方を浮き上がらせます。また1850年代の地理の教科書から引用された普遍的な質問のテキストが、独自のレーザー装置で壁に投影されたり、坂本の友人たち(デヴィッド・シルヴィアンやカヒミ・カリィら)による朗読の音声によって周囲を取り囲み、見えるか見えないか聴こえるか聴こえないかの境界線上で表現されます。

3

これまでのダムタイプを凝縮して体感

1980年代中盤より映像、音、機械装置、空間の先進的な組み合わせによって、驚くべき速さで更新されていくテクノロジーと身体の関係に、都度鋭い問いを投げかけてきたダムタイプ。彼/彼女らのインスタレーション作品はパフォーマンス作品と連動し、《2022》も、18 年ぶりの新作パフォーマンス《2020》と関係しています。かつ、本展で紹介する《2022: remap》では、過去作《Playback》で使用したターンテーブルや、《TRACE/REACT II》の表現言語が新たに交わり、それ以前のヴィジュアル/サウンド表現が組み合わされつつも更新される、ダムタイプの創造性や関心を感じられます。

What is Geography?
What is the Earth?
What is the shape of the Earth?
Of what is the Earth composed?
What is a Continent?
How many Continents are there?
On which Continent do we live?
What is an Ocean?
How many Oceans are there?
Which is the largest Ocean?
What is an Island?
What is a Mountain?
What is a Hill?
What is a Volcano?
What is a Desert?
By what are Deserts formed?
What is a River?
By what are Rivers formed?
Who governs an Empire?
Who governs a Kingdom?
Who governs a Republic?
Which is the largest Empire in the world?
Which is the largest Kingdom in the world?
Which is the largest Republic in the world?
In what Division of the Earth do we live?
When you look at the rising Sun, what Ocean is before you?
Where does the Sun rise?
Where, then, is the Atlantic Ocean?
When you look at the setting Sun, what Ocean is before you?
Where does the Sun set?
What Ocean east of Asia?
What Ocean south of Asia?
What Ocean west of Africa?
What Sea south of Europe?
Which is the largest Island in the World?
How many Countries are there?
How are they divided?
What Country furthest north?
What Country furthest south?
In what Country do we live?
Where is Cape Farewell?

Excerpt from Lessons In Geography,
by James Monteith 1856

Photo: Shiro Takatani

作家プロフィール

ダムタイプ

ビジュアル・アート、映像、コンピューター・プログラム、音楽、ダンス、デザインなど、様々な分野の複数のアーティストによって構成されるグループ。1984 年の活動開始以来、集団による共同制作の可能性を探る独自の活動を続けてきました。特定のディレクターをおかず、プロジェクト毎に参加メンバーが変化するなど、ヒエラルキーの無いフラットでゆるやかなコラボレーションによる制作活動は、既成のジャンルにとらわれない、あらゆる表現の形態を横断するマルチメディア・アートとして内外で紹介されています。

これまでに発表した作品は、メルボルン国際芸術フェスティバル、香港藝術節、バービカン・センター(ロンドン)、新国立劇場(東京)、国際モダンダンス・フェスティバル(ソウル)、リヨン現代美術館、アテネ・コンサートホール、シンガポール芸術祭、シカゴ現代美術館、アムステルダム市立劇場など、世界中のフェスティバルや美術館で数多く上演/展示されています。2018年には、個展「DUMB TYPE ¦ ACTIONS + REFLECTIONS」が、ポンピドゥー・センター・メッス(フランス)で、その後2019年から2020年にかけて東京都現代美術館で開催されました。2020年3月には、新作パフォーマンス《2020》をロームシアター京都で制作。2022年5月6日から9月11日までハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)で個展が開催されました。

Photo: Shiro Takatani

プロジェクトメンバー
高谷史郎、坂本龍一、古舘健、濱哲史、白木良、南琢也、
原摩利彦、泊博雅、空里香、高谷桜子

声:David Sylvian、竹内真里亜、カヒミ・カリィ、ニキ

フィールド・レコーディング (2022年Haus der Kunst の「ダムタイプ展」で展示された、坂本龍一ディレクションによるインスタレーション《Playback》のために録音された音源):

YAN Jun|北京
Crosby BOLANI|ケープタウン
Apichatpong WEERASETHAKUL|チェンマイ
Kali MALONE & Stephen O’MALLEY|ラ・トゥール=ド=ペ
Mukul PATEL|ロンドン
John WARWICKER|メルボルン
Martin HERNANDEZ|メキシコシティ
Giuseppe LA SPADA|エトナ火山
Damian LENTINI|ミュンヘン
Alec FELLMAN|ニューヨーク
Andri Snær MAGNASON & Kaśka PALUCH|レイキャビク
Jaques MORELENBAUM|リオデジャネイロ
Atom Heart|サンティアゴ
CHENG Chou|台北市
Nima MASSALI|テヘラン
オノセイゲン|東京